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伊賀研究拠点
お知らせ

高大連携最終回です(桜丘中学・高等学校)

加藤 進   社会連携特任教授 
久松 眞   伊賀研究拠点副所長
紀平 征希  研究員      

 

 9月14日(水)は見出しの連携事業の最終回です。前回上野都市ガス(株)でエネファームを見学しました。今回は三重県の工業研究所窯業研究室を訪ねて、「三重県の水素・燃料電池の取り組み」と題して燃料電池の開発現状、三重県での現状について庄山昌志氏から講演をしていただきました。私も知らなかった知識をずいぶん吸収できました。

燃料電池には古くから研究されたアルカリ型(有名なアポロ計画に利用)、リン酸型があります。現在の主流はSOFC(solid Oxide Fuel Cell)やPEFC(Polymer Electrolyte Fuel Cell)に世代交代しています。いま、講義を受けている高校生が就職するころはどんな形に変化しているでしょうか?恐らくは発電効率ももう少し増加しているかもしれません。今回のレポートは、講義を聴きながら発見・考えたこと書いてみます。

三重県の現状:講師によれば三重県で走行しているFCVは8台、水素の充填ステーションは2か所(津・四日市)とのことです。ちなみに愛知県ではFCVは80台、ステーションは10か所とのことでした。

燃料電池の明暗:やはり触媒が命です。Pt,Pdなどが知られていますが、埋蔵量が偏在し少ない、価格が高いことです。これらに代わる触媒が研究されていますが実用化にはまだまだかかりそうです。原料としての水素の確保が問題です。いかにしてコストの安い水素を手に入れるかです。「電気分解」はすぐに頭に浮かびますが問題は電力、これが安く手に入れば最高です。「えっ!太陽電池がある!」でもまず①太陽電池は夜稼働しない、高電圧は取れるが②負荷をつなぐと高電流がなかなか取れないことです。そこで教科書的に考えるとバイオマスとしての水素に注目が集まっております。しかし、これも何せ微生物が製造するのもですから量的に少なく、時間がかかり、生産の安定性、H2S等の共存に弱点を克服する必要があります。もっともこういった問題点を一つ一つ克服していくのが科学です。たとえばSOFCなどはCOが燃料ガスとして利用できるようになっています。

小規模発電システム:電気エネルギーですがマンション1戸や10軒程度の家を賄う小規模発電システムも今後注目されてくるでしょう。現在の発電システムは奇妙にも

  発電所(直流)→交流化→トランス(高圧)→送電→トランス(降圧)

      →家庭→コンセント→直流(変換)

で最低2回はインバータを通過し、2回はトランス(変圧器)を経ています。インバータの変換効率は90%程度ですからここで約81%にエネルギーは減少します。となると直流システムを見直す必要があるのでは無いでしょうか?

水素の移動・貯蔵:可燃性のガスですから大きな問題です。一つの考え方としてメタノールやエタノールの形で液体として貯蔵・移動する方法があります。たとえばエタノールの場合、  C2H5OH+3H2O→6H2+2CO2

 

で改質できます。6モルの水素ができるからなかなかの反応です。しかし、H2の純度を挙げることが課題です。また、1Nm3の水素ガスでおおむね1KWの電力を得ることができるそうです。

 このようにいろいろと考えさせていただく機会を提供してくれました。講師の皆さんにお礼申し上げます。

 なお、右の写真は200W程度の燃料電池、下の写真はエタノールを改質して純度の高い水素ガスを得る小型の試作器です。触媒にはZrO2-TiO2に助触媒にCeが使用されているとのことでした。

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