伊勢志摩サテライト三重大学地域拠点サテライト

11月13日、南伊勢町地域連携棟会議室にて、「第3回 伊勢志摩サテライト座談会」を開催しました。

伊勢志摩サテライト座談会は、2018年から開催している「伊勢志摩サテライト交流会」のwithコロナの下での新様式として、伊勢志摩地域の創生について、伊勢市、鳥羽市、志摩市、玉城町、度会町、南伊勢町と大学が共に学び合い、考える場として開催しました。この座談会では、松田裕子伊勢志摩サテライト長のファシリテーションのもと、毎回、特定の地域課題をテーマに学術的・専門的知見を交えつつ、参加者全員でディスカッションを行います。

この日は「withコロナの学校のあり方を考える」をテーマに開催し、５市町と県教委から教育関係者15名、三重大学から教職員6名、学生1名の計22名が参加しました。

座談会は三部構成で行い、参加者による自己紹介の後、第一部では、コロナ禍の学校運営をテーマに、開催地である南伊勢町の取り組みとして、片山嘉人教育長、町立南東小学校の劔山成実校長、商工会青年部の加藤豊也部長（南伊勢町教育委員会委員）から、それぞれ「南伊勢町の公教育の特色」「コロナ禍における学校運営」「地域の関わり・保護者の学校への期待」についてお話しいただき、それを受けて、各参加自治体からもコロナ禍での工夫や優先事項についてご紹介いただきました。南伊勢町では「マイナスをプラスに -できることを考え創っていく-」を合言葉に取り組んだこと、そして各自治体においても、子供たちの学びと生活を守るため、様々な取り組みが行われたことが共有されました。これにより、何よりも、コロナ禍が教育現場に与えた衝撃と混乱の大きさ、現場の方々がこれまでにない状況への対応を考え抜き、全力で取り組まれてきたことがはっきりと感じられました。

（左）松田裕子伊勢志摩サテライト長　（右）片山嘉人教育長

（左）劔山成実校長　（右）加藤豊也部長

第二部では、本学教育学部の松浦直己教授（附属小学校長）から、「withコロナから始まる新しい学校教育のカタチ」と題して、三重大学と津市教育委員会が連携したオンライン学習運営システムの構築と活用について紹介がありました。このシステムは、「Moodle」というオープンソースのeラーニングプラットフォームを利用したもので、三重大学独自のカスタマイズを加えて活用しています。松浦教授からは、「大学はプラットフォームを提供し、各自治体からはコンテンツを提供していただく。コンテンツはシステム上で自治体の枠を超えて共有することができ、優良コンテンツを共有することで、教育の質の向上、教員の負担軽減を図ることができる」「セキュリティも高く、Moodleを介することでZoomやYoutube等のコンテンツも安心して利用することができる」「今後は県内の全市町で利用してもらえるよう連携を進めたい」などの取り組みについての説明に加えて、オンライン教育のメリットとして「これまで難しかった夜空の観測等も可能になる。学校でできること、オンラインでできること、良い部分を繋げることで新たな教育の広がりが生まれる」「子どもたちは自分のペースで学ぶことができ、不登校の子たちへも手厚いフォローが可能になる」などのお話がありました。

第三部の小山巧南伊勢町長を交えた全体討論では、オンライン教育が論点の中心となり、参加者からは「プリントの配布と併せて、授業のポイントだけを５分にまとめた動画を配信した。保護者から何度も再生して見られるのは良かったと反響があった」といった、オンラインのメリットが認識された一方、「視聴状況を確認したら、動画を本当に見て欲しい子にうまく視聴してもらえていないという現実があった」「自分のペースで学べる反面、やらない自由も与える形になった」「環境の整備が課題。端末だけでなく、各家庭でのインフラの状況も把握する必要がある」といったデメリットについても言及がありました。

終わりには、松浦教授から「オンラインやICTの活用にも限界がある。これで全て解決することはできないが、うまく活用して良いより教育のカタチを作ってほしい。環境や家庭都合により教育の格差が広がるという議論もあるが、そこで躊躇するべきではなく、いかに上手く活用するかを考えてもらいたい」と今後の学校教育の在り方への期待が述べられ、座談会を締め括りました。

伊勢志摩サテライトでは、今後も市町と一緒に地域の未来について考えていきたいと思います。

（左）松浦直己教授　（左）小山 巧町長

集合写真（※撮影時のみマスクを外していただきました）