忍者の携帯食、兵糧丸(タイプ1)の製法を考える

2015.4.27


  久松 眞  伊賀研究拠点 副所長 
 

忍びの携帯食としていろいろなタイプの兵糧丸が知られています。これらの兵糧丸の構成成分を調査すると、精神力

持続タイプ(I型)と体力消耗対策タイプ(II型)に大別されます。甲賀流忍法伝書老談集に記載されている兵糧丸は

タイプI型に該当します。材料の特性を引き出すことを第一に製法を検討してみました。

材料と量は、モチ米(五分/2 g)、ウルチ米(五分/2 g)、蓮肉[蓮の実の乾物](壱両/38 g)、山薬[長芋

の乾物](壱両/38 g)、桂心[ニッキ成分を含む樹木の皮](壱両/壱両/38 g)、ヨクイニン[はと麦の種子の乾

](壱両/壱両/38 g)、人参[高麗人参](五分/2 g)、氷砂糖(壱斤半/900 g)で、戦闘モードと冷静さが

要求される忍びの活動をサポートする機能性携帯食と考えると、滋養強壮、鎮静・リラックス、下痢や皮膚病の予防、

エネルギー供給がバランスよく配合されていることに気が付きます。

氷砂糖以外の材料は薬研(やげん)で粉砕し(図1)、漢方薬を煎じる方法で機能性成分の抽出作業をまず行いまし

た。連肉・山薬・桂心・ヨクイニン・高麗人参の粉末をホウロウ鍋(図2)に入れ、1.6リットルの水を加え加熱、沸

騰してきたら弱火にし、約1時間箸でかき混ぜながら煮込みました。氷砂糖は別の鍋に400ミリリットルの熱水で溶解

し(図3 右の鍋)、両液を合わせ米粉を加えドロドロになるまで煮込みました。温かいうちに5号サイズの紙やアル

ミ容器に10ミリリットルぐらい流し込むと80個ほどになりました(図4)。1個の原材料費は約50円ほどになりました

。室温程度に冷えると粘度が下がり飴状に、数日後から砂糖の結晶が表面にあらわれ徐々に固形化(図5)。おなべの

底にへばり付きカップに移せないものをスプーンでかきとると小粒の固形物になりました(図6)。ニッキの香りがマ

イルドにした思ったより美味しい砂糖の塊でした。



図1.薬研で粉砕

 
図2.漢方薬を煎じる


図3.氷砂糖に別に溶解

図4.5号カップに小分け
 
図5. 表面から砂糖の結晶化
 
図6. 小粒の固形物
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