忍びの携帯食としていろいろなタイプの兵糧丸が知られています。これらの兵糧丸の構成成分を調査すると、精神力
持続タイプ(I型)と体力消耗対策タイプ(II型)に大別されます。甲賀流忍法伝書老談集に記載されている兵糧丸は
タイプI型に該当します。材料の特性を引き出すことを第一に製法を検討してみました。
材料と量は、モチ米(五分/約2 g)、ウルチ米(五分/約2 g)、蓮肉[蓮の実の乾物](壱両/約38 g)、山薬[長芋
の乾物](壱両/約38 g)、桂心[ニッキ成分を含む樹木の皮](壱両/壱両/約38 g)、ヨクイニン[はと麦の種子の乾
物](壱両/壱両/約38 g)、人参[高麗人参](五分/約2 g)、氷砂糖(壱斤半/約900 g)で、戦闘モードと冷静さが
要求される忍びの活動をサポートする機能性携帯食と考えると、滋養強壮、鎮静・リラックス、下痢や皮膚病の予防、
エネルギー供給がバランスよく配合されていることに気が付きます。
氷砂糖以外の材料は薬研(やげん)で粉砕し(図1)、漢方薬を煎じる方法で機能性成分の抽出作業をまず行いまし
た。連肉・山薬・桂心・ヨクイニン・高麗人参の粉末をホウロウ鍋(図2)に入れ、1.6リットルの水を加え加熱、沸
騰してきたら弱火にし、約1時間箸でかき混ぜながら煮込みました。氷砂糖は別の鍋に400ミリリットルの熱水で溶解
し(図3 右の鍋)、両液を合わせ米粉を加えドロドロになるまで煮込みました。温かいうちに5号サイズの紙やアル
ミ容器に10ミリリットルぐらい流し込むと80個ほどになりました(図4)。1個の原材料費は約50円ほどになりました
。室温程度に冷えると粘度が下がり飴状に、数日後から砂糖の結晶が表面にあらわれ徐々に固形化(図5)。おなべの
底にへばり付きカップに移せないものをスプーンでかきとると小粒の固形物になりました(図6)。ニッキの香りがマ
イルドにした思ったより美味しい砂糖の塊でした。
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