「忍者・忍術と本草学」の講演を終えて

2016.9.10

社会連携研究センター 教授山本 好男

9月10日(土)、伊賀連携フィールド2016前期 市民講座 忍者・忍術学講座で「忍者と本草学」について講演しました。講演後のみならず終了後にも多くの方から質問がありました。みなさんの薬草に関する興味や関心が高いことが伺われました。講演及び質問を踏まえて、講演内容を紹介します。

忍者は忍術を駆使し、情報の収集や諜報活動・戦闘活動などを行う集団で、忍術には、密偵術、剣術、火術、呪術、薬学、天文学などがあるといわれています。これらの忍術の施術および忍者としての活動は、厳しく過酷な訓練で培われており、この施術の基本は健康な体を有することといっても過言ではないと考えます。

また、現在のように病気やけがで医者に行くことが容易な時代と異なり、医者にかかることが困難な時代では、病気やけがを治すため、健康な体の維持のために、多くの薬草が用い、また、暗殺や人をあやつることに毒草を利用していたとされています。よくわからない眠り薬などが忍術本に記載されていますが、確かなものは、番犬退治の馬銭(毒成分;ストリキニーネ、)、暗殺にはトリカブト(毒成分;アコニチン)、不思議な阿呆薬は大麻(毒成分;テトラヒドロカンナビノール)で、ストリキニーネは昭和50年ころまで野犬退治に使用され、大麻は現代でも乱用され、事件や事故を引き起こしています。暗殺にはトリカブトが用いられ、現在でもこれを用いた殺人事件が起きています。

忍者は、薬学、本草学に詳しく、野山に生える薬草、毒草を見分ける能力にも長けており、忍者が利用した薬の原材料となる薬草は、伊吹山から蒲生野、甲賀、伊賀、宇陀、熊野地域(金沢から熊野地域までのベルト地帯)に豊富に育ち、薬業発展との関連が示唆されます。また、伊賀では薬学・製薬の知識を持つ渡来人との交流も推測(徐福伝説)され、忍者のみならず人々が病気やけがの治療に多くの薬草を利用していたことが考えられます。

忍者は、本草学、薬学の知識を蓄積し、虫薬(虫下し)や胃腸薬など健康維持に効果のある薬草を用い、その多くは現在も煎じ薬やお茶、胃腸薬などの医薬品原料として利用され、時に不思議な薬として大麻を、毒殺・暗殺にはマチンやトリカブトを使用したと考えます。

 

講演の様子

講演の様子


見分けられますか? よく似た植物を忍者は見分けていました。