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お知らせ

「北勢スマート農業研究会」第3回を開催しました

2021年9月10日(金)13時00分より、生物資源学研究科の野中章久准教授が代表を務める「北勢スマート農業研究会」の第3回を、オンラインで開催しました。

本研究会は、農業の発展に向けた地域農業分析に基づくニーズ把握はもとより、三重大学発「自作型IoTシステム」の導入試験を通じた担い手農家のリテラシー向上等を目的としております。このような目的で設置した本研究会の第3回として、企業、学生等を中心に、総勢11名が参加しました。


 今回は前半に野中准教授から、生産者様の協力を得て実施したキクラゲやイチゴ栽培時のCO2監視を事例に、農家自作型IoT機器の導入成果について、費用計算による経済性評価まで踏み込んだ内容で紹介がありました。

まずCO2濃度測定については、IoTデバイスを設置したことで「従業員が立ち入ることによる空気の攪乱が生じない」「他の業務に支障をきたすことなく毎日定時に記録が採れる」というメリットが、使用者の声として紹介されました。

そしてIoTシステム導入で気になる設置費用についても、「この機器がいくら、この通信料がいくら...」と具体的な計算過程が紹介され、さらにそれぞれの機器について、会計上の耐用年数のみならず現実的な使用寿命にも説明が及んでいたので、導入を検討する事業者の目線からもイメージを掴みやすい内容紹介となりました。


実際の使用者の感想として、「COセンサは安くはないが、データを採れて電気代を節約できるのでかなり良い」との評価を得ているとのことです。自作型IoTの強みは自社にカスタマイズした無駄のないシステムを作れることですから、「念のため付けたけど無くても大丈夫だな」と思えば順次改良していけます。利用者の意見をフィードバックすることで無駄を減らし、さらなるコスト削減の可能性も示され、現に先ほど「安くはない」と漏らした生産者の方にも大いに費用低減の余地が示されました。

現場に行かずしてスマートフォンで現場の状況を確認できるようにすることはスマート農業の事例では一般化しつつありますが、そこからさらに踏み込んで、既存のSNSサービスも活用し、「いかに少ないステップ数で情報を確認できるか」を追求していくことが実用性を高めるカギとなるでしょう。


後半の講師濱田拓氏はアメリカの大手金融会社におけるシニアスタッフの経験を持つデータサイエンティストで、野中准教授と共同研究にとり組んでいます。スマート農業で蓄積したデータにデータサイエンスを組み合わせて分析していくという先駆的な利用可能性をお話し頂きました。講演では、季節変動や計測誤差を機械学習によって識別した上で、センサの故障か季節的に例外的な気温となっていることを検知するシステムを農家自作型IoTシステムに組み込み、上手く作動したことが報告されました。機械学習は温度や湿度、CO2濃度といった数値データに留まらず、蓄積した画像データの分析にも使用可能で、病虫害の診断等への応用が期待できます。


質疑応答後には、実際にスマート農業に取り組む企業の参加者から、蓄積した情報の活用の仕方について相談があり、データサイエンスの知見も交えての意見交換の場となりました。

以上

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