被災神社の植樹祭

2013.8. 5

荒木 利芳 社会連携特任教授

 石巻市で開催されたJSTプロジェクトの中間報告会に出席した帰りに、東北大震災で被災した宮城県亘理郡

山元町にある八重垣神社と青巣稲荷神社を訪ねた。八重垣神社は徳逸大師によって807年に開かれたそうで

、祭神は素戔嗚尊である。写真1はインターネットから転載したものだが、震災前の赤い鳥居と総檜造りの立

派な社殿は1789年に造営されたそうである。しかしながら、一昨年の大震災での大津波で海岸から600mしか離

れていない本神社は流され、数本の松の木を残すだけの壊滅的な被害を受けた。氏子や地域住民は心のよりど

ころである本神社を再建するための第一歩として、平成24年6月24日に宮脇横浜国立大学名誉教授の指導のも

と植樹祭を行った。当日は氏子や地域外からのボランティアなど450名余りが集まり、この土地本来の植種、

潜在自然植生であるタブ、シイ、カシなど21種類3300本の苗木が植樹されたそうである。

  


写真1.震災前の八重垣神社

http://miyagitabi.com/yamamoto/yaegakijinja/index.html

 写真2は被災神社と植樹から約1年経過した樹木の様子を撮影したものである。他の神社から譲り受けた小

さなやしろを中心に周りに植えられた苗木は塩害等が心配されたが、順調に生育しているようである。
 
       

     植樹林で囲まれた境内             仮のやしろ         植樹後1年経過した樹木

             

写真2. 震災後の八重垣神社
 八重垣神社から車で5分くらいのところに御祭神の宇迦之御魂神を祀る青巣稲荷神社がある。本社は1189

の十一面観世音の石像に始まり、1797年に
一位稲荷大明神、1869年に青巣稲荷神社に改称されたそうである
                                          
 (写真3)。
 
             

写真3. 震災前の青巣稲荷神社

http://jinjajin.jp/modules/newdb/detail.php?id=6839



 今回の大津波により御神木のタブノキを1本残して、社殿や鳥居は流されている。現在は仮の社殿や石の鳥

居、山の神の祠と梵鐘がある。本神社でも鎮守の森の再生を目指して、平成25429日に植樹祭が行われた

。約350名が参加し、21種類、2300本が植樹されたそうである。私は85日に見学したが、まだ苗木は小さか

ったが元気に根付いているようである(写真4)。

 
     

写真4. 震災後の青巣稲荷神社

 鎮守の森は古来より日本人の自然観、文化、豊かな心を育み、地域社会の心をまとめる地域コミュニティー

の中核的存在だったようですが、時代とともにその数は急激に減少しているようです。また、カシやシイ、タ

ブノキなど地域に根ざした樹木による鎮守の森は火災や津波などに対しても防災機能を有しているといわれて

いますので、これら植樹林も早く大きく育ってもらいたいたいものです。