伊賀研究拠点は文部科学省のプロジェクト特別経費(地域貢献機能の充実部門)により、平成26年度から科学的な切口か
らの忍者・忍術研究を進めています。普段は農民の生活をしていたと思われる忍者は、戦いが始まると戦国武将の配下で当時
最先端の科学的知識と技能・体力を駆使し、冷静さを保ち強い気持ちで忍びを遂行したと言われています。この心のコントロ
ール法として呼吸法や印を結び魔よけの呪文をしたと言われています。これらの動作をすることで、忍び活動で強いストレス
がかかる極限状態でも冷静に作業したと想像されています。が、科学的にそれらの行動がストレス対策となったかどうかにつ
いての検証はありませんでした。そこで、三重大学医学部の精神科専門医でストレス科学分野がご専門の小森教授にご協力を
お願いし、四名の忍者修行者に被験者となっていただきストレス試験を行いました。伊賀流忍者博物館名誉館長で三重大学社
会連携研究センター特任教授の川上さんのほか、伴家忍之傳研修所代表の清本さん、黒党(くろんど)の黒井さん、阿修羅の
浮田さん、川上さんのもとで忍者修行をされた千賀さんです。
小森先生がこれらの実験データを整理し、解析して結論を出されるにはまだ一カ月以上時間がかかるそうです。それまで実
験結果はお預けですが、実験中小森先生は面白くなってきたと言われています。実験の様子を見学しましたので速報として紹
介します。
基本的な実験設計は、忍びにかかるストレスをスーパークレぺリン検査で与え心拍数の変化と脳波の変化を併用して調べる
実験でした。いずれの忍者修行者もこのクレぺリン検査でストレスがかかることが分かりました。4名の忍者修行者は、忍者
の気持ちで印を結んでからストレスをかけた場合と、忍者であることを忘れて普通の状態でストレスをかけた場合の両方の実
験をしました。呼吸法や印を結んだあとスーパークレぺリン検査で生じたストレスは、なぜか心地よいストレスで心拍数が正
常状態に戻る時間が非常に早く、リラックスに関係する脳波もよく出るようです。
2015.12.28の中日新聞の「ストレス肯定で力に」の記事の一部を紹介します。「実はストレスは自分を助け、強く成長させ
るもの。避けるのではなく利用すべきです」を提唱されているボストン大学のケリー・マクゴニガル先生の考えです。緊張す
ると心臓が高鳴りしますが、これを体に悪いと否定的に考えると血管が収縮するそうです。肯定的に考えると血管は収縮せず
たくさんの血液が組織に送られ実際に力がでるそうです。
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