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菰野中学で市教研です

加藤 進   社会連携特任教授

 

5月18日(水)は菰野中学校を会場にして理科の市教研(矢谷先生:座長)です。中間テストで忙しい時期ですがおおむね全員が集まってくれました。テーマは「ボルタ電池~ダニエル電池へ」というものです。高校への橋渡しを考えて矢谷先生と選んだテーマです。今回は二部形式で進めました。

 

  15:00~16:40 ボルタ電池~ダニエル電池へ

  16:45~16:50 自由記述振り返り

  16:50~17:20 燃料電池と鉛蓄電池

 です。電池の歴史を紹介してから、実験に入りました。

 もう、10年くらい前に大御所の戸田先生からいただいた"蔵出しの"ボルタの電堆の久しぶりの登場です。これは戸田先生が宇田川榕庵の書いた「舎密開宗(せーみかいそう)」を忠実に再現したものです。

 

円形の銅板と亜鉛板の間に食塩水を含浸したラシャ綿を挟み、組み上げます。20個程度組み上げると、瞬間的に数十ボルト出ますのでの電気分解も可能です。しかし、20個も利用すると掃除が大変です(この意味分かりますか?)。そこで、ラシャ綿にコントレックス(硬水)を含浸させます。こうするとpowerはありませんが、あとの片付けは大変楽です。ボルタの電気化学への寄与の大きさがわかる重要な実験です。

次は、ダニエル電池の紹介です。ここでもグリーンケミストリーという立場から実験後の廃棄物の発生を極力抑えたサンドイッチ型を紹介しました。ダニエル電池は中学では研究として一部の教科書にはあがっています。しかし、皆さん体験は少なかったようです。ソーラーmotorにつないでプロペラが回るとベテランの先生からも"オーッ"という声が聞こえました。ここにいたって、ダニエルが始めて、安定して、長時間、化学的に"電流"を取り出すことに成功したわけで大きな功績です。全体の化学反応式は

    Zn→Zn2++2e

    Cu2++2e→Cuとなり、全体では

  Zn+Cu2+→Zn2++Cu
となります。したがって、高校では酸化・還元とういう単元で学習します。

 


写真1 サンドイッチ型のダニエル電池

 

愈々最後は燃料電池です。このオリジナルは野曾原氏(千葉県)が生徒と考案したものですばらしい教材です。10年前に、Akkn研究会で知り、かなり改良しました(作りたい方はご連絡ください)。1個作るのに1000円くらいかかります。タイプは原理が分かりやすいアルカリ型です。よくwebで見つけるのは、酸性溶液あるいはアルカリ溶液を電解質に利用、炭素棒を電極として、手回し発電機で電気分解し(H2とO2を炭素棒に吸蔵させる)、これを使ってmotorを回しているのを見かけますがこれは「なんちゃって燃料電池」です。理由を考えてみてください。野曾原式ではNi-ネット(200mesh)にPdをPdCl2(inHCl-aq)から電析させます。これだけの操作ですばらしいfuel-cellの完成です。

 


写真2 Ni-netの表面状態

 

 私がSEMで撮ったNi-netの表面の写真も載せておきます。電気化学者の自分としてはこの写真を載せる事は忍びないです。つまり、Pdは電析していますが、「ハガレ」がおきています。これは高電流で電析させるので内部応力が高いためとおもわれます。低電流で電析させると電池の性能が悪くなります。

さて、このcellは、酸素は空気中の酸素を水素はバンベから供給します。電極のサイズは40mm×60mm程度、bodyは100均の3個のケースです。うまくPdをコーティングするとソーラーモーターを1基間近く回す事ができます。これは、30mA程度の電流を取り出せる事を意味しています。起電力は1.1Vですが、負荷をつなぐとやや下がるので電子オルゴールを鳴らす事は直列に2個つながないと難しいです。自分はまだためしておりませんが、MeOHを電解質と混ぜて使うといわゆるメタノール電池も作る事ができます。ここで、原報では0.5N-NaOHをアルカリとして利用しています。しかし、KOHの報が性能がよくなります。NaとKの水和球を含めたイオン判形?の性かもしれません。友達の昔の仲間の先生にききましたが「わからん!」とのことでした。とくに、もうお気づきと思いますが、アルカリ型の欠点は空気中之CO2です。つまり保存に気をつけないと

2OH+CO2→CO32-+H2O

という副反応でOHが消費されてしまいます。簡単には、デジケータにN2ガスを入れて保存すると性能が保たれます。アルカリ型がアポロ計画で宇宙に持っていかれたのはこの理由よると思われます。水洗いは不要です。どうしてもPdの電析物が水洗いで落ちるためです。今回はこれくらいにしましょう。参加された先生方ご苦労様でした。

 


写真3 野曾原式の燃料電池

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