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第4回目 中高大連携(燃料電池作り)

加藤 進   社会連携特任教授
紀平 征希  研究員     

 

 7月13日(水)は桜丘学園(伊賀市青山)との高大連携講座の4回目です。今回はゴールを意識して、H2が採取されたという仮定で、燃料電池を作りました。燃料電池には種類がありますが、ここで取り上げたのはアルカリ型の燃料電池です。この燃料電池の歴史は古く、アポロ計画で使用されたという重い実績があります。教育的な観点から見ると、構造が簡単であるために学習用の自作教材には最適です。

今回は、10年くらい前に、千葉の安房高校で試作された野曾原式(別名:安房式)を加藤が改良したものです。原典ではNi-netが高いのでステンレスnetを使っていますが、Ni-netの方が加工が楽です。今回は250meshを使いました。

さて、燃料電池の全反応は

      2H2 + O2 → 2H2O

です。極めて簡単なものです。それぞれの式をみましょう。

      H2 +2OH- →2H2O + 2e   ①

この反応は、通常の条件では有限時間の範囲で起こりません。ここでクローズアップされるのが触媒となるPt,Pd,などの貴金属です。電析が楽なのでPdCl2を触媒に利用します。500ppm程度の電解液(HCl酸性)をつくり、カーボンをanodeにしてNi-netにPdを電析させます。脱脂工程、酸洗い、水洗は不可欠です。電流密度は計算が難しいので、電流で表現しますが1~1.5Aで表裏3minずつ電析させます(電極間の距離にもよりますが使用したセルでは浴電圧は4Vでした)。この結果、Ni-netがPd-coatされて黒くなるのが目視で分かります。写真1をみてください。あとは100金のタッパに組み込むだけです。構造は写真2をご覧ください。


写真1

完成した燃料電池は、0.5N-KOH7mlをキッチンペーパーに含浸させて、底側の容器にH2をいきよいよく吹き込めば完成です。なお、原法ではNaOHの使用がうたってあります。しかし、アルカリとしてはKOHがbetterです。燃料電池の起電力は1.1V程度ですが負荷が加わると0.8-0.9Vに低下します。そのために、電子オルゴールはなりません。やはり、電池で不可欠の「なでて君=LED」と「ソーラーモーター」が必要です。ソーラーモーターは30~40mA回転に必要です。小さな簡単な燃料電池でこれだけの出力が出せるのは驚きです。室内で実験をします。泣き所は空気中のCO2です。特に保存には気を配ります。すなわち、大気中のCO2とKOHが反応して

   CO2 + 2KOH → K2CO3 + H2O   ②

でOHが消費されます。そのためにアポロ計画ではこのタイプが選択されたわけです。使用後、水洗いはしないで、N2雰囲気のデシケーター内で保存します。この操作によって、1ー2年は保存が可能です。三重県でこの電池の講習会を開いたのは初めてです。末永く教材として使っていただくことを期待して筆をおきたいと思います。皆様ご苦労様でした。

 


研修風景

 


燃料電池でなでて君を光らせる

 


写真2 燃料電池の構造

 

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