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伊賀の神社・鎮守の森めぐり(その4)

荒 木  利 芳 社会連携特任教授
土 屋  竜 太 研究員
紀 平  征 希 研究員

 

 第1回目は天照大御神、第2回目は建速須佐之男命やスサノオ関連の神々、第3回武甕槌命経津主神、事代主命

建御名方命を祀る神社について述べましたが、第4回目は木花咲耶姫命(酒解神社穴石神社)、栲幡千々比賣命(

美恵神社
)、五男三女神(八柱神社市杵島神社)、稚日女神(阿波神社)、呉服比賣命(小宮神社)など、神話を彩る

女神を祀る神社をご紹介します。

 なお、上述の青色の文字をクリックすると各神社の説明があります。

木花咲耶姫命(コノハナサクヤビメノミコト)

 別称:木花開耶姫、木華開耶姫、木花之開耶姫、木花之佐久夜毘売、木花開耶媛命、神阿多都比売、神吾田津姫、神吾田

    鹿葦津姫、鹿葦津姫、豊吾田津媛、桜大刀自神

 コノハナサクヤビメは名前の通り、咲き誇る桜のように美しい、絶世の美人いや美神である。その証拠にアマテラスオオ

ミカミの孫であるニニギノミコトが出会ってすぐに一目惚れし、彼女の父である大山祇神(オオヤマツミノカミ)に願い出

て結婚している。そのときオオヤマツミは姉のイワナガヒメももらってくれるように頼んだが、容姿が醜かったためかニニ

ギは姉の方は断り、コノハナサクヤビメだけを娶っている。イワナガヒメは体が丈夫で非常な長寿の持ち主であったが、そ

れを断ったため、ニニギの子孫は美しさは獲得したが、寿命は人間並みになったそうである。コノハナサクヤビメは一夜で

妊娠したため、あらぬ疑いを晴らそうと産屋に火を放ち、燃えさかる炎のなかで海彦山彦のおとぎ話で有名なホデリ命(海

幸彦)、ホスセリ命、オホリ命(山幸彦)の3人の子供を無事出産した。このことから、この神は安産の神として祀られる

ようになった。なお、オホリ命の孫であるイハレヒコノ命が神武天皇である。また、コノハナサクヤビメは大いなる山の神

であるオオヤマツミの娘ということもあってか、富士山の神霊であり、富士山本宮浅間神社に祭神として祀られている。浅

間系の神社は全国に約1300社あり、神徳は農業、漁業・航海、安産・子授け、火難消除、織物業守護などとされている。

 また、父親のオオヤマツミは、神世七代の神々の最後の夫婦神であるイザナギ命とイザナミ命によって産み出された沢山

の神々のなかの一柱の神で、大いなる山の神であるとともに海の神でもあり、また酒の神である酒解神でもある。

 ニニギノミコトは大国主命が国譲りに同意したあと、アマテラスの命により地上を治めるために天孫降臨したとき、コノハ

ナサクヤビメに出会い結婚することになるが、このことにより天津神と国津神が結ばれることになるのである。




栲幡千々比賣命(タクハタチヂヒメノミコト)

  別称:萬幡豊秋津師比売命(よろづはたとよあきつしひめのみこと)、栲幡千千姫命、栲幡千千媛萬媛命(たくはたちぢひめよろづひめ      

       のみこと)
、天萬栲幡媛命(あめのよろづたくはたひめのみこと)、栲幡千幡姫命(たくはたちはたひめのみこと

 タクハタチヂヒメは造化三神の一神であるタカミムスヒの娘で、アマテラスの長男であるホシホミミノと結婚し、天孫降

臨の主役となるニニギノ命を産んでいる。この女神は機織りや織物をつかさどる神で、織物業守護の神徳がある。また、


幡豊秋津師比売命との
別称があるように、穀物の豊かな実りの秋を表す「豊秋津」から穀物の神であり、生命力の象徴、

生む力をもつことから子宝や安産の神でもある。
タクハタチヂヒメノミコトは福島県の塩沢神社(織物御前神社)や三重県

の椿大神社、大阪の泉穴師神社などに祀られている。



五男三女神

 イザナギの禊ぎで生まれたアマテラスとツキヨミは父イザナギの命を守ってそれぞれ天上の国と夜の国を治めていたが、

弟のスサノオは死んだ母イザナミに会いに根の竪州の国に行きたいと泣き叫んで、海を治めるべき務めを果たさなかったた

め、イザナギはスサノオを勘当する。それで、スサノオは姉アマテラスに別れを告げに行くが、嵐神スサノオはその荒々し

い振る舞いのため、アマテラスは天上の国を奪いに来たと誤解する。スサノオは身の潔白を証明するために、互いに子を産

むことを提案する。スサノオはアマテラスの勾玉を取って噛み砕き、吹き出した息から五柱の男神(
正勝吾勝勝速日天之忍

穂耳命、天之菩卑能命、天津日子根命、活津日子根命、熊野久須毘命)を産んだことにより、アマテラスはこの五柱の男神

の母となった。アマテラスはスサノオの十拳剣を受け取り噛み砕いて、吹き出した息の霧から三柱の女神(多紀理毘売命、

市寸島比売命、多岐都比売命)が産まれた。これによりスサノオは邪心のないことが証明され、アマテラスの誤解が解ける

ことになる。三柱の女神は宗像三女神とも呼ばれ、もともとは九州
玄界灘沿岸から壱岐・対馬を経て朝鮮半島と結ぶ海の道

を支配し、大陸との交易の中心的存在であった海人集団「宗像一族」が崇拝していた地方神であったが、大和政権と結びつ

いてより強力な霊威を発揮する航海守護の海の神としての地位を獲得したとされている。宗像三女神の"田心姫神"は玄

界灘の孤島"沖ノ島・沖津宮"に祀られており、次女の、"湍津姫神""大島・中津宮"に祀られ、 末女の"市杵島

姫神"は宗像大社境内の"辺津宮"に祀られている。美人の誉れ高い宗像三女神のなかでも飛び切り美しいとされるイチ

キシマヒメは神仏習合によって仏教の弁才天と同神「弁天様」としても広く信仰されている。"宗像三女神"は「宗像神

社」を総本宮として「厳島神社」をはじめ、約6,200社に祀られている。神徳は海上安全、交通安全、豊漁、商売繁盛など

があり、またイチキシマヒメを祀る弁天社は、知恵、財福、戦勝、子孫繁栄や音楽、技芸、弁舌などの芸能に関する神徳が

ある。


稚日女神(ワカヒルメノミコト)

別称:稚日

 ワカヒルメは日本書紀に二カ所出てくる神だそうである。一つ目は機織りの神であるワカヒルメがアマテラスの神聖な機

殿で神衣を織っていたとき、スサノオが機殿の屋根に穴を開け、そこから皮を剥いだ斑馬を投げ込んだため、驚いたワカヒ

ルメは持っていた
梭で誤って女陰を突き刺して死んでしまったとある。二つ目は神功皇后三韓外征の帰途大和に向かっ

ていると、船が真直に進めなくなったため、武庫の港(
神戸港)に還って占いを行った。そこでワカヒルメが現れられ

「私は生田神社にいたい」と神宣があったので、生田神社に祀ると海は平穏になり、船を進めることができたそうである。

 また、生田神社の由緒記には「稚日女尊は、我国における最高神太陽神と崇められ伊勢神宮内宮にお祀りされる天照大神

(あまてらすおおみかみ)
の和魂(にぎみたま)あるいは妹神と伝えられ、稚くみずみずしい日の女神様であり、物を生み育て万物

の成長を御加護する神様です」とある。

 神徳は風雨の神、疫病鎮護、五穀豊穣、健康長寿、縁結びの神、商売繁盛、子宝安産などで兵庫県の生田神社をはじめ、

神奈川の比々多神社、大阪の今宮戎神社、三重県の香良洲神社などに祀られている。




呉服比賣命(クレハトリヒメノミコト)

 クレハトリヒメは養蚕・機織の技術を持つ呉服部を監督する立場にいた服部氏の祖先神として祀られた女神だそうである。

以上今回は七柱の女神について述べましたが、神話の世界でも天照大神をはじめ多くの女神たちが活躍しています。

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