第1回目は天照大御神、第2回目は建速須佐之男命関連の神々、第3回目は武甕槌命関連の神々、第4回目は木花咲耶姫
命関連の神々を祀る神社について述べましたが、第5回目は火之迦具土神(奥山愛宕神社、愛宕神社)、速玉男神(飛龍
神社)、別雷神(田守神社)を祀る神社をご紹介します。
なお、上述の青色の文字をクリックすると各神社の説明があります。
火之迦具土神(ヒノカグツチノカミ)
別称:火之夜藝速男神(ひのやぎはやをのかみ)、火之炫毘古神(ひのかがびこのかみ)、
火之迦具土神(ひのかぐつちのかみ;加具土命)、軻遇突智(かぐつち)、火産霊(ほむすび)
速玉男神(ハヤタマヲノカミ)
別称:速玉之男神(はやたまのをのかみ)、速玉大神(はやたまのおおかみ)
別雷神(ワケイカヅチノカミ)
混沌とした世界が天と地に分かれたときに、高天原には造化三神ついで二柱の神、さらには神代七代(二組の独神と五組
の男女神)と呼ばれる神々が出現した。高天原の神々は最後に生まれた男女の神の伊弉諾尊(イザナキノミコト)と伊弉冉
尊(イザナミノミコト)に形の定まらない地上に国を作るように命じられた。イザナキとイザナミは授けられた天沼矛でド
ロドロとした地上をかき混ぜ、矛先からしたたり落ちる滴で八つの島(淡路島、四国、隠岐島、九州、壱岐島、対馬、佐渡
島、本州)すなわち大八島国すなわち日本列島を生み出します。さらにいくつかの島々を生み出した後、神代七代を引き継
ぐ抽象的な神々が生まれ、ついで山や海、風、木、水、穀物などの神々が生まれるが、火の神である火之迦具土命が生まれ
るときに大変な不幸が訪れる。カグツチが炎に包まれながら生まれてきたためにイザナミは大やけどを負い、この火傷が原
因で命を落としてしまう。愛する妻を亡くしたイザナキは十挙剣を抜き、怒りにまかせて、生まれたばかりのカグツチの首
を切り落としてしまう。この想像を絶する出来事の後、さらに想像豊かな物語が続く。十挙剣の刀身からの血が岩石にした
たり落ちることにより、健御雷之男命など三柱の神、十挙剣の柄からの血から二柱の神、剣の先端からの血が岩石に落ちる
ことにより三柱の神が、また、カグツチの死体の頭や胸、腹、手、足などから八柱の神々が生まれ出でた。このように斬ら
れたカグツチの血から、岩石の神、火の神、雷神、雨の神、水の神、山の神など多くの神々が生まれる様子は、火山の噴火
や鍛冶作業から連想されたものと言われている。
イザナギはカグツチの首を切り落とした後も、イザナミに対する思いは募るばかりで、遂に黄泉の国からイザナミを連れ
戻すことを決意する。やっとのおもいでたどりついた地底にある真っ暗な黄泉の国でイザナミと話すことができる。しかし
ながら、生前の世界に戻るためには黄泉の国の王の許可が必要なため、イザナミは「決して私の姿を見ないように」と念を
押して王のもとへ姿を消した。だが、待てど暮らせど戻ってこないため、しびれを切らしたイザナギは灯りをともして、妻
の姿を見てしまう。彼が目にしたものは、腐敗し、異臭を放ち、ウジがたかるイザナミの醜い姿であった。さらに、その頭
からは大雷神、胸から火雷神、腹から黒雷神、女陰から裂雷神、左手から若雷神、右手から土雷神、左足から鳴雷神、右足
から伏雷神の八柱の雷神が生まれ出でていた。この変わり果てた姿をみたイザナギは恐れおののいて逃げ出してしまう。約
束を破って醜態を見られたイザナミはおおいに激怒し、黄泉の国の醜女や雷神たちに追わせたが、イザナキは辛うじてあの
世とこの世の境にある黄泉比良坂まで逃げ追うせる。最後にイザナミが猛然と追いかけてきたため、イザナキは千引の巨岩
で黄泉国の入り口を塞いでしまう。怒ったイザナミは「あなたの国の人々を1日に千人ずつ殺してやりましょう」と叫ぶと
、イザナギは「それなら、私は1日に千五百人の子供ができるようにしましょう」と応酬する。このときイザナキが吐いた
唾から生まれたのが速玉男神である。この唾を吐くという行為は悪魔払いやお祓い、浄化を意味するそうである。
速玉男神は熊野三所権現(熊野三山)の一つである熊野速玉大社の主祭神である。また、火之神であるカグツチは都を火
災から守ることを願って、鎮火、火難除けとして祀られ、また郷土守護としての御神徳もある。カグツチを祭神とする愛宕
・秋葉信仰の神社は京都の愛宕神社や静岡県にある秋葉山本宮秋葉神社を初めとして約800社あるそうである。田守神社の
主祭神である別雷神は雷と関係する神様である。科学的知識のない古来の人々にとって、雷の発する轟音や地を裂くような
稲光は現代の我々以上に恐ろしいものであった。また、雷の後には恵みの雨がもたらされることも知っていた。神話の世界
でもイザナミの死体から生み出された八雷神や賀茂別雷神など多くの雷神が生み出されることからもその影響力の大きさを
うかがい知ることができる。別雷神の「別」は若いとか雷を別けるほどの強い力などの意味があるそうである。賀茂別雷神
の話としては賀茂建角身命の娘の玉依姫が鴨川で拾った丹塗矢を寝床の近くに置いたところ玉依日売は懐妊し、男の子が
生まれた。これが賀茂別雷命である。丹塗矢の正体は比叡山に宿る山の神、大山咋神という説と乙訓神社の火雷神であっ
たという説がある。賀茂別雷神を祀る本山は京都の賀茂別雷神社(上賀茂神社)で、下鴨神社である賀茂御祖神社には賀茂
建角身命が祀られている。
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